■著者 神埼宣武
■出版社 ちくま文庫
■価格 860円+税
■ひとことでいうと
中村遊廓の実態を生存者の聞き込みでまとめたノンフィクション
横浜流星さん主演の令和七年(2025)NHK大河ドラマ・べらぼうはかつて江戸にあった吉原という遊郭街が舞台です。ご覧になった方は吉原の豪華さに驚かれたと思いますが、実は現在の愛知県名古屋市に吉原を超えるといわれた遊郭があったのをご存知ですか?それが中村区の中村遊廓。
大正十三年(1924)にできた中村遊郭は戦前、戦中が最も栄えており、昭和三十三年(1958)の売春防止法をキッカケに衰退の一途をたどることになりました。平成になり、偶然に中村遊廓の成駒屋の解体現場に出くわした筆者が、成駒屋そして中村遊廓に興味が湧き調査を開始。生存していた関係者からの聞き込みをまとめたのがこの1冊です。
裏側なんてもんじゃない!
遊郭は豪勢な表側がもてはやされていますが、やはり裏側があります。しかし生存者からの聞き込みでは、この裏側というのが現代人の私達の想像を超えるものでした。
●人身売買
●性病検査
●妊娠
●身請け
●人間関係
●遊女の借金が減らないしくみ
など、大河ドラマでは、まず描けない史実がどんどん書かれており、私は一気に読み終えてしまいました。
現場とかけ合わせることができる
中村遊廓は今では商業地区、住宅地になっていますが、大正時代の建物がチラホラ残っており、町割りの区画は現在でもよくわかります。つまり現地散策できるのです。私も史跡巡りの会で訪れたことがありますが、現地を歩く前、歩いた後に聞き書き遊郭成駒屋を読むと、現場を実感できます。この身近さが郷土史の醍醐味でもありますね。
女性にも読んでほしい
遊郭といえば男性目線の施設ですが、この本はその遊郭で働いていた女性のことが多く書かれています。本の内容は女性にしか理解できない部分も多々あって、だから女性にも読んでほしいというのが私の感想です。